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行動経済学ー危険回避型 VS 危険追求型ー

こんにちは。えびです。

今回のテーマはタイトルにある通り、”危険追及型か危険回避型か”ですが、注意してほしいのは、よく目にする性格診断や占いなどで取り上げられる類のものではないということです。

僕が今回書くのは、インターネットや本なんかでたくさんの質問に答えていった結果、

 

「○○さんは、リスクを恐れず、冒険好きな”危険追及型”です!!」

 

といった風に診断される際に述べられるものとは、異なります。

むしろ、行動経済学の観点から見て人間はどんな環境・状態に置かれたときに、危険を好んで勝負に出るのか、あるいは危険をとらずに手堅くいくのか、といったことを見ていきます。

一般的にギャンブル好きな人は、危険追及型であると語られることが多いですが、今回の投稿を読んでいただければ、なぜそのように見えるのかが明らかになります。

 

行動経済学と危険

 

今回の説明で使うツールは、行動経済学の第一人者であるカーネマンとトヴェルスキーが考案した「プロスペクト理論」です。

前にプロスペクト理論を用いて損失回避性についてまとめたのですが、今回も説明を視覚的にわかりやすくするために、僕が作成したプロスペクト理論の図を用います。

 

プロスペクト理論と損失回避性の関係のページはこちら

 

 

縦軸:知覚される幸福の度合い

横軸:得られる(失われる)金額

理解が得られやすいように、各数値は僕が仮定したもので、実際のデータなどから算出されたものではありません。

 

今回注目して欲しいのは、金額が大きくなっている部分です。数字でいうと、横軸の400と‐400に近づいている部分です。

これらの部位に注目して記事を読んでください。

 

金額が大きくなると、金銭感覚がマヒする

 

まず今回のテーマに関して重要な点の一つ目が、

 

金額が大きくなればなるほど、僕たちは金銭感覚が鈍感になる

 

という点です。

例えば、次の2つのことを考えてください。

 

A:あなたは、車のガソリンを20リットル分給油しようと思い、近所のガソリンスタンドによりました。

すると、昨日までは1リットル当たり150円だったガソリンが、今日は1リットル当たり160円に値上がりしていました。

店員に聞くと、ロシアで原油代が値上がりしたことが理由だと説明されました。

とても気のいい店員で、2キロ先にあるガソリンスタンドは、原油を中東の方の国と取引しているため、今日も1リットル当たり150円のままだと教えてくれました。

あなたは、2キロ先のガソリンスタンドまで言って給油しに行きますか?

 

B:あなたは、新生活が始まり、家電量販店に最新式の冷蔵庫を買いに来ています。

気に入った冷蔵庫があり、購入を決めました。最新式のため値段は少し張り、15万円でした。

あなたは、サービスカウンターで自宅の方に配送して欲しいとお願いします。

すると、その店では配送する場合、送料として200円頂いていると、説明されました。

しかし、2キロ先の同一系列の店舗だと、現在キャンペーンをやっているため送料が無料になると教えてくれました。

あなたは、2キロ先の店舗に行って、冷蔵庫を買いますか?

 

上記の二つの問いでは、問題となっている額はどちらも等しく200円です。

しかし、多くの人がBの問いに比べてAの問いで問題とされている200円の方が大きな差異として認識されたと思います。

このように僕たちは、問題となる金額が多くなるほど、その差に関して鈍感になってしまうという傾向を持っています。

先ほど出したプロスペクト理論の価値関数のグラフでは、横軸が原点から離れるほど、傾きが緩やかになっていくことが、このことを表しています。

 

得をするなら確実に、損をするなら大胆に

 

もう一つの重要な点についてまとめます。

この点に関しても、2つの問いを比較して考えていきたいと思います。

 

A:100%の確率で30万円もらえる

B:80%の確率で40万円もらえる

 

なんとなくですが、Aを選んだ人が多いのではないでしょうか。

この例も、カーネマンとトヴェルスキーが行った価値関数を調べる実験を少しもじったものです。

実際に行われた実験でも、この場合ほとんどすべて人がAを選んだようでした。

ちなみにコンピュータにこの質問をすると、Bを選ぶはずです。

なぜなら、期待値はAの場合30万円、Bの場合32万円と、Bの方が高いからです。

 

カーネマンとトヴェルスキーがは、上記の実験に加えてもう一つ別のパターンの実験も行いました。

それを少しもじったものがこれです。また、読者の人もどちらを選ぶか、一緒に考えてみてください。

 

A:100%の確率で30万円を失う。

B:80%の確率で40万円失う。

 

実際の実験結果では、今度はほとんどの人がBを選んだらしいです。

これも同様にコンピュータに聞くと、僕たちと逆で潔くAを選ぶはずです。

期待値を計算すると、Aの方が損失における額が低いからです。

 

この特徴は、最初のグラフでカーブの形として表されています。

利得の領域では、カーブの形が凸型になっていて、損失の領域では、その形状が凹型になっています。

ここに僕たちの手堅さと大胆さの性を見ることができます。

 

利益の場面では危険回避型に、損失の場面では危険追及型に

 

上記の二点をまとめると、次のことが言えます。

要するに、僕たちは

 

得をしそうな場面では確実性が高い選択をして、損しそうな場面ではリスクをとって勝負に出る

 

という傾向を持っています。

このことを参考にして、ちょっとギャンブラーの行動について考えてみると、次のように理解できるかもしれません。

 

ギャンブラーはまずギャンブルをするために席代やチップ、ゲームへの参加料などを払っているため、そもそも損をした状態である。

また、勝負をする時は必ず一度、自分の手元からお金(チップ)が減らして場に出さなければいけない。

さらに、目に見える形で自分が勝っているのか、負けているのか容易に計算できる。

 

これらの点を考慮すると、なぜギャンブラーが危険追及型の人に見えてしまうのか、説明できます。

つまり、ギャンブラーは価値関数グラフにおいて、意思決定を行う場面に遭遇するために損失の領域で物事を考えなければいけないのです。

 

損をするとわかっているなら、大きく賭けてしまう……

 

冷静さを失う大きな要因です。

今日の記事から最も学んでほしいことがあります。

それは、

 

僕たちはしばしば、損をしたくないがために自らより損をする選択をしてしまうことがある

 

ということです。

結局は、コンピュータがはじき出すような、期待値の計算に基づいた意思決定をすることは到底むずかしいことです。

僕たちは、とにかく損をしたくないという願望を持っています。その願望が意思決定において大きな影響を及ぼしている自覚を持っておくだけで、見方が変わってきます。

 

この投稿を読んでくれた人は、ぜひ柔軟な意思決定ができるようになって、後悔しない選択肢を選んでほしいです。

また、各人が持つ危険に対する選好は単純に正確で片付けられるものではなく、同一人物でも時と場合によって変化するものであることも覚えておいてほしいです。

 

読んでいただき、ありがとうございました。

 

文責:えび

 

参考文献

丹羽由一(2016)『カイジから経済を学べ』日本経済新聞出版社

マッテオ・モッテルリーニ(Matteo Motterlini)(2015)『経済は感情で動く』(泉典子=訳)紀伊國屋書店

 

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